ダッタンそばとは?

起源と特徴

韃靼(ダッタン)とはもともとモンゴル民族全体の呼称です。起源地は中国やモンゴルからきたといわれています。ダッタンそばと普通そばは、いずれもタデ科のソバ属に分類される植物ですが、分類学上の種(しゅ)を異にする近縁の植物です。普通ソバはミツバチ等の虫による花粉の媒介を必要とする他殖性植物であるのに対して、ダッタンソバは自殖性です。染色体数はともに2n=16で同数ですが、遺伝的な差が大きいため通常の方法では両者の雑種は得られません。

歴史

日本でダッタンソバが初めて文献に登場するのは。「和漢三才図会」(1712年)であり、その中にダッタンソバは「苦蕎麦」の名で紹介されています。また、日本でダッタンソバが栽培されていた記録としては、「小石川植物園草本目録」があり、「苦蕎麦」の文字を見ることができるようです。わが国での実用栽培のきげんは必ずしも明確ではありませんが、1986年頃、岩手大学がバイカル湖周辺か、あるいは中国(採取地は明確にはわかっていない)から持ち帰られた種子によって、1988年に岩手県九戸郡軽米町で始まったようです

一方、北海道では1995年、森 清氏(当社加入団体会長)が、健康食品を中心に取り扱っていた生活科学研究所の大久保哲郎氏から、おそらく中国産と思われるダッタンソバを栃木県で増殖したものを、1キログラム譲り受け、札幌市西区西野の畑に播種したのが最初と思われます。そのご、この種子を増殖し、新潟、長野、九州豊後高田、そして奈良県へ広がっていきました。

栽培面積と産地

ダッタンソバとソバの総統計数値は、ソバとして1つにまとめられており、個々の栽培面積は明確ではありませんが、ダッタンソバの栽培面積は、平成26年には全国で約250ヘクタール程度(その大部分は北海道)になったと推定されます。ダッタンソバを含めたソバの日本全体の栽培面積は平成24年には61,000ヘクタールですから、これに比べるとダッタンソバの面積ははまだ微々たるものです。当社加入団体がダッタンソバの国内栽培生産量の90%以上で、会員の中には農林水産大臣賞等受賞者が多数おり、主に有機栽培や無農薬、化学肥料を使用しないで栽培しています。

効果・効能

ダッタンソバにはビタミンが豊富に含まれていますが、特にビタミンB群が豊富です。心臓病を予防するといわれているビタミンB1、高血圧、動脈硬化の予防に効果があるといわれているビタミンB2は米や小麦粉の何倍もの量が含まれています。ミネラルでは、摂取量が足りないと身長が伸びなかったり味覚障害が起こったりする亜鉛、血圧を下げるカリウム、虚血性疾患の予防になるマグネシウムなども、米や小麦に比べて多く含まれていることが分かっています。ダッタンソバと普通ソバの成分はほとんど変わりませんが、「ルチン」の含有量が極めて高く、普通ソバの100倍も含まれています。ルチンは雑穀の中でソバだけに含まれている成分です。

主な栄養成分 韃靼そば そば 小麦
ナトリウム(mg)    0.3   2   1   2
カリウム(mg)   405 410  88  80
マグネシウム(mg)   173 190  23  23
亜鉛(mg)   2.28  2.4  1.4  0.8
ビタミンB1(mg)   0.64 0.46 0.08  0.1
ビタミンB2(mg)   0.12 0.11 0.02 0.05
ルチン(mg) 1800  15   0   0

<日本食品分析センター調べ および五訂日本食品標準成分表より>

ルチンパワー

ルチンとは赤ワインやカカオ、お茶などで最近注目を集めているポリフェノールの一種です。ルチンには毛細血管に弾力を与え、丈夫にする作用があります。血圧を下げたり血液の流動性も良くする(血液をさらさらにする)ので、脳梗塞などの病気を予防し、動脈硬化症や糖尿病などといった成人病の予防や治療に有効であることが、動物実験や臨床試験結果などでたくさん報告されるようになってきました。また、ルチンはビタミンCを正しく吸収してコラーゲンの合成を促進するので、シミ・しわ・たるみを予防し、肌の老化防止に効果があるといわれています。

抗酸化作用や毛細血管強化効果等を有するとされるルチンの含有量が多いという特徴がありますが、従来の品種はルチン分解活性が極めて強く、例えば麺等を製造するため粉に水を加えると子実に含まれるルチンの大部分が分解してしまう上に、味が強烈に苦くなるためダッタンソバの利用は限られていました。

大和ダッタンそば

私たちが作付けする大和ダッタンそばは苦味やえぐみが非常に少なく、加工後のルチン含有量が格段に多いことがあげられます。

普通そばに比べ大和ダッタンそばはルチンが100倍から120倍とも言われています。産地は奈良県を中心とした国産で、化成肥料等を使わない有機・無農薬栽培であることを目指しています。

用語の解説

ダッタンソバ
ソバ属の栽培植物の一種で,中国を筆頭にロシア、EU諸国、ネパール等で栽培されています。平成24年度は全国で300ha程度作付されており、北海道が主産地となっています。ダッタンソバは自殖性であるため、他殖性の普通ソバとは異なり、ハエやハチ等の訪花昆虫の活動が低温によって制限される厳寒地でも栽培可能です。また,種子は普通ソバの100倍程度多くのルチンを含有します。

ルチン
ポリフェノールの一種で、ソバの有する代表的な機能性物質のひとつです。穀物ではソバのみが含有するとされています。ヒト介入試験にて一日20-30mgの摂取により毛細血管を強化する効果や、また360mgの摂取により脂質代謝の改善効果が報告されております。

抗酸化能
生体内、食品等において酸素が関与する有害な反応を弱める又は除去する能力のことです。

自殖性作物
同じ個体の花粉によって種をつける作物(他殖性作物は、種をつけるためには他の個体から花粉を運ぶ昆虫等の手助けが必要なため、開花時期の気温によって収量が大きく変動。なお、ダッタンソバは自殖性のため温度による昆虫の活動の影響を受けずに種をつけることができます。)

ルチン分解活性
ルチンを分解する酵素活性のことです。従来品種のダッタンソバ種子のルチン分解活性は非常に強力なため、ダッタンソバ粉に水を加えるとルチンの大部分を分解してしまいます。また、ルチン分解活性がダッタンソバの苦味物質生成の引き金になっています。

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